20世紀後半のバロック音楽ブームの火付け役となった、
美麗なカンタービレと豊潤な歌に満ちた、最もイタリア的な《四季》
イ・ムジチ合奏団の持つ、明るくしかも艶をおびた音色、溌溂としたリズムと明晰さ、見事なレガート奏法、そして各奏者の均質性は、このヴィヴァルディの名曲の再現には最適で、20世紀後半のこの曲のイメージの原点となったといっても過言ではありません。
イ・ムジチは半世紀以上にわたって《四季》の録音を重ねていますが、その原点ともなったのがこの1959年の最初のステレオ録音でした。ヴァイオリン・ソロを担ったのはイ・ムジチの創設メンバーの一人で1968年まで17年間にわたって在籍し、第1期黄金時代を築き上げたコンサートマスターのフェリックス・アーヨ。歌う楽器としてのヴァイオリンの魅力が極限まで発揮されたこのアルバムを、国内プレスとしては33年ぶりにアナログ盤として復刻しました。
ESOTERIC「名盤復刻シリーズ」アナログレコード 2作品発売
ESOTERIC(エソテリック)は、「ESOTERIC名盤復刻シリーズ」アナログレコード2作品を発売いたします。ESOTERIC独自の技術を駆使して開発した「Esoteric Mastering」によるリマスタリングと、拘り抜いたカッティング作業により、「アナログ新時代」を告げる作品に仕上がっています。
巨匠トスカニーニが絶賛したアンサンブル
20世紀中盤に実現したLPレコードの到来・普及とともに一気に加速したのがいわゆるバロック音楽への関心でした。1952年、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院の学生によって結成され、イタリア語で「音楽家たち」という名を冠したイ・ムジチ合奏団は、そうしたバロック音楽への人々の関心を感じ取り、19世紀風のロマンティシズムに歪められたヴィヴァルディやコレッリを始めとするイタリア・バロック音楽の表現を正したい、という思いで演奏活動を開始。第1ヴァイオリン3−第2ヴァイオリン3−ヴィオラ2−チェロ2−コントラバス1という弦楽アンサンブル11名にチェンバロ1名を加えた12名というコンパクトな編成を採用し、レパートリーを含む演奏方針についてはメンバー全員による合議制という体制を整え、第2次大戦後に加速したバロック音楽についての研究や楽譜の出版という学術的な正当性をバックグランドにすることで、クラシック音楽の新たなジャンルの開拓に乗り出したのです。イ・ムジチ合奏団は、1952年にデビュー後、数年のうちに大きな成功をおさめ、ヨーロッパのみならず南米アメリカを含む世界的な人気を獲得。イ・ムジチの演奏に接した巨匠アルトゥーロ・トスカニーニも「ブラヴォー!ブラヴィッシモ!音楽は死んでいなかった!」と激賞し、その人気の高まりにお墨付きをつける形となりました。
空前のベストセラーとなった伝説の《四季》
イ・ムジチ合奏団の持つ、明るくしかも艶をおびた音色、溌溂としたリズムと明晰さ、見事なレガート奏法、そして各奏者の均質性は、このヴィヴァルディの名曲の再現には最適で、20世紀後半のこの曲のイメージの原点となったといっても過言ではありません。曲に付されたソネットに記されているような描写性を特に強調せず、即興的な装飾なども加えず、自然な緩急をつけながらも全体としては妥当なテンポを採り、楽譜を忠実に再現する極めてオーソドックスなアプローチは、この曲の持つ美しさを純粋に味わうことのできるうえでかけがえのないもの。イ・ムジチはCD時代に至る半世紀以上にわたってフィリップスに《四季》をさらに4回の録音を重ねていますが(2012年に別レーベルに通算7度目の録音を行っています)、その原点ともなったのがこの1959年の最初のステレオ録音(通算では2度目)でした。ヴァイオリン・ソロを担ったのはコンサートマスターのフェリックス・アーヨ(1933年スペイン・バスク地方のセスタオ生まれ)。イ・ムジチの創設メンバーの一人で、1968年まで17年間にわたって在籍し、第1期黄金時代を築き上げました。アーヨの特徴は、何といっても楽器を豊かに鳴らして生み出される磨き上げられた音色と絶妙なボウイングによる美しいフレージング。これによって、歌う楽器としてのヴァイオリンの魅力が極限まで発揮されています。
美しく究められた、尽きることのないレガートの魅力
イ・ムジチの録音の多くは時計で有名なスイスのラ・ショー・ド・フォンにある音響効果抜群のサル・ド・ミュジックで行われましたが、当盤の《四季》はウィーン(会場不詳)で録音されています。後年のイ・ムジチの録音ほど残響感はないものの、適度な広がりと明晰度で中低音の響きが充実した、ボディのある弦楽のサウンドを味わうことができます。プロデュースを手掛けたヴィットリオ・ネグリ(1923-1999)はヴィヴァルディの研究者として知られ、イ・ムジチが演奏する楽譜の編纂にもかかわり、1950年代後半からはフィリップスのプロデューサーとしてイ・ムジチを始めとする数多くの録音をプロデュースした人物。モーツァルト学者として著名な指揮者のベルンハルト・バウムガルトナーのアシスタントを務めたこともあるプロの指揮者でもあり、後年はヴィヴァルディの宗教曲集や歌劇《ティート・マンリオ》など指揮者としての録音もフィリップスに残しています(アーヨとは1975年にベルリン室内管弦楽団と《四季》を再録しており、この1959年盤とは正反対の、アイデア満載で、手練手管を尽くした立体的で歯切れのよい演奏を成し遂げています)。この演奏の国内プレスによるアナログ盤は1982年が最後で、今回のアナログ盤復刻は33年ぶりとなります。新たにオリジナルマスターより「Esoteric Mastering」にて、アナログレコード専用にマスタリングを行いました。入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clock、MEXCELケーブルを惜しげもなく使用し、徹底して高音質化を目指したマスターを作成しました。
アナログ・カッティングは、ミキサーズラボ社にて、アナログ最盛期の名機、ノイマン社製カッティング・レースVMS80を使用しました。同機は西ドイツで製造され、現在日本国内では2台しか稼働していません。ミキサーズラボ社のご協力を得て、カッティングルームに「Esoteric Mastering」の機材を持ち込み、出力をノイマン社製カッティング・コンソールSP79Cにダイレクトに接続。コンソールのイコライザーを使わずに、「Esoteric Mastering」サウンドをそのまま、カッティング工程へ送り込みます。
カッティングは、ミキサーズラボ社のカッティング・エンジニア 北村勝敏氏。匠の手腕をマスター盤に注ぎ込んで頂きました。現在では、レコード・プレス用のマスター盤カッティングのみで、試聴のためだけにラッカー盤をカッティングする事は稀ですが、エソテリックでは音質を追及するため、コンソールへの伝送方式を変えながら複数のラッカー盤を作成しました。作成した複数のラッカー盤は、エソテリック・マスタリング・センターへ持ち帰り、ESOTERICのアナログターンテーブルGrandioso T1で試聴・音質確認を行い、最適な伝送方法を決定しています。
徹底してアナログの音にこだわりを込めて作成し、オリジナルマスターのもつ情報を伸びやかなサウンドでアナログレコード化することに成功しました。
「年齢を重ねることを忘れた演奏、ここに在り」
「抒情的な感じを大切にしているのが大きな特色で、リズムと響きが柔らかく、全体に大変よく歌い、かつ流している。まさにイタリア人の心そのものをうたい上げたような、伸びやかな表現で、その緊密なアンサンブルと美麗な音色がなんとも魅力的だ。アーヨのソロは、音色があたたかく、技巧もしっかりとしており、このレコードが超ロングセラーとなったのも、当然であろう。」
『クラシック・レコード・ブックVOl.3 協奏曲編』1985年
「旋律の装飾や変奏のないオーソドックスな《四季》だ。適正なテンポ、柔らかい艶やかな音色とレガート奏法での、いかにも流麗な仕上げには、まさにイタリア本場物の味わいがある。アンサンブルなどの技術面も見事で、磨かれた外面の美しさを誇りながら、にじみ出るような情感も豊かだ。アーヨのソロは、音色があたたかく、技巧もしっかりしている。」
『クラシックCDカタログ‘89』1989年
「アーヨの独奏は、いかにもイタリアのヴァイオリニストらしくのびやかな歌に溢れたもので、音色は極めて明るい。イ・ムジチ全体の磨き抜かれたアンサンブルも美しく、指揮者なしで完璧な音楽を作り上げている。かつてトスカニーニは彼らを評して『間違いなく世界で一番美しい室内合奏団だ』と言ったが、その言葉を最もよく裏付けているのが、彼らの原点ともいえるこの《四季》なのである。」
『クラシック名盤大全 協奏曲編』1998年
「ほぼ半世紀前に《四季》を、あるいはヴィヴァルディを世に広めた記念すべきアルバムである。バロック演奏史として見ても、確かにこの録音はその入り口付近に建てられた記念碑であった。この記念碑を目標に、あるいは出発点として進んでいった人も多いことだろう。」
『ONTOMO MOOK レコード芸術選定 クラシック不滅の名盤1000』2007年
「世界に《四季》ブームを、ヴィヴァルディ・ルネサンスを巻き起こした画期的、金字塔的な演奏。覇気が先行した1955年のモノラル盤から格段の音楽的成長を遂げた合奏団は、輝かしい、硬質な透明感を持った響き、確信に満ちた音楽性が眩しいほど。その上を颯爽と、躍動するように展開するフェリックス・アーヨの艶と張りのあるソロ・ヴァイオリン。柔軟なフレージング、内容(標題)と形式のバランス、楽器あら紡ぎ出される詩情。イ・ムジチ合奏団はこの後も別のヴァイオリン奏者と《四季》の録音を繰り返したが、常にアーヨと比較されるほど、この慄然とした独奏は強い印象を与える。録音から60年!年齢を重ねることを忘れた演奏、ここに在り。」
『最新版 クラシック不滅の名盤1000』2018年
[収録曲]
◇アントニオ・ヴィヴァルディ(1678〜1741)
ヴァイオリン協奏曲集《四季》
[Side A] 協奏曲 第1番 ホ長調 RV269《春》 |
[1] |
第1楽章:Allegro |
[2] |
第2楽章:Largo |
[3] |
第3楽章:Allegro(Danza pastorale) |
協奏曲 第2番 ト短調 RV315《夏》 |
[4] |
第1楽章:Allegro non molto – Allegro |
[5] |
第2楽章:Adagio - Presto – Adagio |
[6] |
第3楽章:Presto(Tempo impetuoso d’estate) |
[Side B] 協奏曲 第3番 へ長調 RV293《秋》 |
[1] |
第1楽章:Allegro(Ballo, e canto de'villanelli) |
[2] |
第2楽章:Adagio molto(Ubriachi dormienti) |
[3] |
第3楽章:Allegro(La caccia) |
協奏曲 第4番 へ短調 RV297《冬》 |
[4] |
第1楽章:Allegro non molto |
[5] |
第2楽章:Largo |
[6] |
第3楽章:Allegro |
[詳細]
フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン)
イ・ムジチ合奏団
録音 |
1959年4月29日〜5月6日、ウィーン |
LP初出 |
Philips 835 030 AY(1961年) |
日本盤LP初出 |
Philips SFL7507(1961年8月) |
オリジナル・レコーディング |
[コーディング・プロデューサー]ヴィットリオ・ネグリ
[レコーディング・エンジニア]トニー・ブツィンスキ、ハンス・ラウターシュラーガー |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。