バルトークの独創性豊かな傑作の多様な魅力を表現した名演・名録音。
ESOTERICならではのこだわりのSuper Audio CDハイブリッド・ソフト
マスターサウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で継続して高い評価をいただいているESOTERICによる名盤復刻シリーズ。 発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤を貴重なマスターから進化したテクノロジーと感性とによってDSDマスタリングし、 新たなSuper Audio CDハイブリッド化を実現してきました。今回はDECCA、旧フィリップス、旧EMIの名盤から、アナログ時代およびデジタル初期を代表する名演・名録音4タイトルをSuper Audio CDで発売いたします。
ショルティとバルトークとの縁
ゲオルグ・ショルティ(1912-1997)とシカゴ交響楽団は、カラヤン=ベルリン・フィルやオーマンディ=フィラデルフィア管と並び、20世紀後半のオーケストラ演奏の極点を極めた存在でした。 録音面でもデッカに数多くの歴史的名盤を残したこのコンビによる演奏が、当シリーズに登場するのは今回が初めてとなります。 後期ロマン派の作曲家の作品を除くと、ショルティがコンサートで最も多く指揮した20世紀の作曲家はバルトークだと言われています。 ブダペストのフランツ・リスト音楽院の学生だった時、あるいは同地の国立歌劇場のコーチだった時に、ショルティはバルトーク自身と直接的な接点がありました。 とはいってもそれは個人的に親密な関係であったわけではなく、教師としても気難しいことで知られた当時50歳のバルトークが受け持ったピアノ講座で6週間過ごしたほか、 1938年10月の「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」のハンガリー初演で、ピアニストだった作曲家夫人の譜めくりをしたことぐらいでした。 それでもショルティはバルトークという人物の音楽への献身的な姿勢や集中力に大きな感銘を受けており、指揮者として国際的な活動を開始してからは、 おそらく同郷のフリッツ・ライナーやアンタル・ドラティらと同じくらい、バルトークの音楽の世界的な普及に大きく貢献しました。 録音面では1950年代というショルティの録音経歴の早い時期にすでにモノラルで舞踏組曲と「弦・チェレ」をロンドン響と録音し、 1960年代半ばには舞踏組曲の再録音と「管弦楽のための協奏曲」をステレオで録音し、長らくアナログ時代の定番として聴き継がれていました。 そしてCD時代の黎明期に「管弦楽のための協奏曲」と舞踏組曲を新しいテクノロジーで改めて録音し(このアルバムは1981年のレコード・アカデミー賞を受賞)、 さらに1989年には「弦・チェレ」を含むもう1枚のバルトーク・アルバムを録音しています。当アルバムはこの最後の2枚から3曲を1枚に収録しています。
作曲者の指示を厳格に順守する姿勢を貫く演奏解釈
楽譜に書かれたことを厳格に順守することを旨としていたショルティは、これらの作品の演奏や録音に当たっても、バルトークが記したメトロノーム表記や表情の指示に忠実に従っていますが、 自筆譜を参照する過程で「管弦楽のための協奏曲」第2楽章の印刷譜にあったメトロノーム指示の矛盾を指摘したほか、楽譜に指示されている「アレグレット・スケルツァンド」よりもより速い「アレグロ・スケルツァンド」であるべき、という確信を持つようになりました。 (1944年世界初演時のプログラム冊子には「アレグロ」と印刷)。またこの楽章の「対の遊び Giucco delle coppie」という楽章名もむしろバルトークが自筆譜に記した「対の提示 Presentato la coppie」の方がより音楽のイメージを体現していると主張するなど、 バルトーク演奏解釈の本質を鋭く捉えた指揮者でした。オーケストラの全てのパートの動きを完璧に掌握し、一音一音にあるべき表現を与え、音楽が放つエネルギーをさらに倍化させて聴き手に届ける姿勢はショルティの音楽作りの根本ですが、 それによってバルトークの音楽も極めてヴォルテージの高い緊張感に満ちた様相を呈し、作品の持つ個性がより強烈に浮かび上がってきます。 そして、伝説のハーセス率いるトランペット・セクション、クレヴェンジャー率いるホルン・セクションに代表される強靭な金管・木管パートのほか、弦楽パートの最後列の一人に至るまで名人を揃えたかのようなヴィルトゥオーゾ集団であるシカゴ交響楽団も、 そのショルティの解釈をそのまま実際の音として体現しています。
本拠地オーケストラ・ホール録音への復帰第1弾
シカゴ交響楽団はLP初期以降ジャン・マルティノン時代までRCAの専属でしたが、1969年のショルティの音楽監督就任によってDECCAに移籍し、DECCAによる明晰な録音が大きな話題を呼ぶようになります。 マルチマイクによって細部を明晰に拾い、豪壮な迫力を感じさせる緻密に作りこまれた音作りは、単なるコンサートの追体験としてではなく、独自の再現芸術としてのレコーディングの在り様を再定義し、その価値を高めることに貢献したのです。 録音会場はシカゴ響の本拠地でもあった1904年建立のオーケストラ・ホール(現在の座席数は2,522)。DECCAによるシカゴ響の録音開始当初は改装による影響で音響効果が悪化していたため、メディナ・テンプルやイリノイ大学講堂など別会場が使われていましたが、 音響改善の努力を重ね、ちょうど1981年1月のセッションからオーケストラ・ホールに復帰しています。それゆえこのアルバムのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」と舞踏組曲は、同時期に録音されたブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」などと共に、 オーケストラ・ホール録音への復帰第1弾となった記念碑的な録音ともなりました。客席部分の奥行きが少なく、縦に延びる構造であるこのホールの空間は、残響感が少なくショルティの音楽作りの肝である明晰な立体感を表現するには基本的に適しており、 これ以後いくつかの例外を除き、ショルティ=シカゴの録音はオーケストラ・ホールで行われることになります。「管弦楽のための協奏曲」と舞踏組曲は、DECCAとしてはオーケストラ全体の響きの空間性を重視したミキシングがなされており、 その中で木管・金管のソロや弦楽パートの細かな動きが拾い出されています。8 年後の「弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽」では、よりオーケストラに近接した音作りで、左右二手に分けられた弦楽パート、 中央に配置されたピアノや打楽器のパートが丁寧に収録されています。デジタル初期の名録音として知られていたため、今回が初発売以来初めての本格的なリマスターとなります。今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、 これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、新たに構築した「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clock を投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
■『水も漏らさぬ完璧なテクニックによる完全無欠な演奏』
「まさに水も漏らさぬ完璧なテクニックによる完全無欠な演奏。スコアの細部に至るまで極めて緻密に行き届いた配慮によって生き生きと表現されている。 ショルティのハンガリー人としての血の躍動も前編に溢れており、指揮者と楽員の心が完全に一致した名演といえる。「舞踏組曲」もハンガリー的な色彩感と土俗感が鮮やかに再現された好演奏である。」 (『レコード芸術』、1985年5月号、特選盤)
「ショルティの細心かつ緻密で、しかもスケールの大きい指揮もさることながら、とくにオーケストラの巧さが光る。輝かしい音色と完璧なまでのアンサンブルで曲の魅力を余すところなく伝えている。 「舞踏組曲」もそれに劣らぬ名演で、そこに強烈に香るハンガリー的色彩は、ハンガリー人ショルティの血が生み出したものだろう。」 (『クラシック・レコードブック VOL.2管弦楽曲編』、1985年)
「ショルティはかつてバルトークに師事していたし、⦅管弦楽のための協奏曲⦆のリハーサルの時、それまで使用されていたこの曲のスコアの間違いも発見するなど、何かとこの作曲家、作品には縁があった。 そのためかどうか不明だが、この演奏はショルティの録音の中でも特筆ものである。言うまでもなくこの曲はオーケストラの機能がカギであるが、それを見事に制御しながら、充分に勢いのある彫りの深い表情を達成している。 併録の⦅弦・チェレ⦆も同傾向の名演である。」(『クラシック名盤大全・管弦楽曲編』、1998年)
「⦅管弦楽のための協奏曲⦆は、ショルティのマジャール人としての血の躍動が全編にあふれているかのような演奏である。 第4楽章など、実にハンガリー的な色彩をのこうに表出しているし、終楽章も力感と生命力にあふれた表現で、シカゴ交響楽団のもつ色彩感を巧みに生かし、鋭い切れ味で曲の核心に迫っている。 ⦅舞踏組曲⦆も、若いころバルトークから直接教えを受けたショルティの民族的な感覚が発揮された演奏で、ハンガリー的な色彩感と土俗的な香りを鮮やかに表出している。どの曲にもハンガリーの土の匂いが強烈に感じされる名演である。」 (『クラシック不滅の名盤800』、1997年)
「ショルティの広大なレパートリーの中でも、同郷の作曲家で直に指示したことさえあるバルトークはやはり別格の存在に違いない。 その代表的な名盤の一つがこれ。とりわけ協奏曲は、オーケストラ音楽を聴く醍醐味を満喫させてくれるという意味で、作曲家の意図を100パーセント実現した快演と呼ぶに値するものだろう。ショルティ69歳の時の録音だ。」 (『クラシック不滅の名盤1000』、2007年)
[収録曲]
ベラ・バルトーク Béla Bartók
管弦楽のための協奏曲 Sz116
Concerto for Orchestra, Sz 116
[1] |
第1楽章:序章
Introduzione (Andante non troppo - Allegro vivace) |
[2] |
第2楽章:対の遊び
Giuoco delle coppie (Allegretto scherzando) |
[3] |
第3楽章:エレジー(悲歌)
Elegia (Andante, non troppo) |
[4] |
第4楽章:中断された間奏曲
Intermezzo interrotto (Allegretto) |
[5] |
第5楽章:フィナーレ
Finale (Pesante - Presto) |
舞踏組曲 Sz77
Dance Suite, Sz 77
[6] |
第1曲:Moderato |
[7] |
第2曲: Allegro molto |
[8] |
第3曲: Allegro vivace |
[9] |
第4曲: Molto tranquillo |
[10] |
第5曲: Comodo |
[11] |
第6曲:Finale (Allegro) |
弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 Sz106
Music for Strings, Percussion and Celesta, Sz 106
[12] |
第1楽章:Andante tranquillo |
[13] |
第2楽章:Allegro |
[14] |
第3楽章:Adagio |
[15] |
第4楽章:Allegro molto |
詳細
録音 |
[管弦楽のための協奏曲・舞踏組曲]1981年1月19日&20日
[弦楽器・打楽器・チェレスのための音楽]1989年5月14日&11月14日
シカゴ、オーケストラ・ホール |
初出 |
[管弦楽のための協奏曲・舞踏組曲]【LP】400 0521【CD】400 0522 (1981年)
[弦楽器・打楽器・チェレスのための音楽]430 3532(1990年) |
日本盤初出 |
[管弦楽のための協奏曲・舞踏組曲]【LP】L28C1003(1981年10月21日)【CD】400 0522(1982年10月20日)
[弦楽器・打楽器・チェレスのための音楽]POCL1059(1990年11月25日) |
オリジナル・
レコーディング |
[プロデューサー]ジェームズ・マリンソン(管弦楽のための協奏曲・舞踏組曲)マイケル・ハース(弦楽器・打楽器・チェレスのための音楽)
[バランス・エンジニア]ジェームズ・ロック(管弦楽のための協奏曲・舞踏組曲)スタンリー・グッドール(弦楽器・打楽器・チェレスのための音楽) |
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