作品に込められたあらゆる感情を包み隠さず表出するバーンスタインのマーラー。
エソテリックによる名盤復刻シリーズ SACDハイブリッドソフト
マスターサウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で継続して高い評価をいただいているESOTERICによる名盤復刻シリーズ。発売以来LP時代を通じて決定的名盤と評価され、CD時代になった現代にいたるまで、カタログから消えたことのない名盤を貴重なマスターから進化したテクノロジーと感性とによってDSDマスタリングし、新たなSuper Audio CDハイブリッド化を実現してきました。今回はドイツ・グラモフォン、旧フィリップス、旧EMIの名盤から、アナログ時代およびデジタル初期を代表する名演・名録音4タイトルをSuper Audio CDハイブリッドで発売いたします。
マーラー作品の最も忠実な使徒、バーンスタイン
20世紀におけるグスタフ・マーラー作品の最も忠実な使徒の一人、指揮者としてのみならず、作曲家、ピアニスト、そして何よりも音楽を通じての巨大なコミュニケーターとして20世紀に巨大な足跡を残したレナード・バーンスタイン(1918-1994)。バーンスタインは、20世紀におけるグスタフ・マーラー作品の最も忠実な使徒の一人でもあり、生涯にわたってマーラーの作品を取り上げ、その音楽の普及に努めました。ニューヨーク・フィル時代には、作曲者の生誕100年を記念してアメリカで最初の大規模なマーラー音楽祭を企画し、さらにLP時代にマーラーの交響曲全集を完成させた最初の指揮者の一人であり(1960年〜67年録音)、その後も映像による交響曲全曲の収録(1971年〜76年)、さらにはCD時代に2度目の交響曲全集のレコーディングに取り組んでいます(1987年〜88年、第8番のみは録音されず)。そのほか、大地の歌、歌曲(ピアノ伴奏、オーケストラ伴奏)もほぼ網羅して録音し、マーラーについて巡らせた考察を様々な形で映像化するなどの熱心な取り組みの積み重ねは、バーンスタインのマーラー作品への没入ぶりの証左といえるでしょう。
2度目の全集の中間点となった第5番
バーンスタインのマーラーは当シリーズでも2014年にベルリン・フィルとの交響曲第9番の1979年ライヴ録音をSuper Audio CDハイブリッド化(ESSG-90107、完売)しておりますが、今回の交響曲第5番は、その8年後の1987年9月にウィーン・フィルとの演奏旅行の途上、フランクフルトでライヴ収録されたもので、バーンスタインがドイツ・グラモフォンに録音中だった2度目の交響曲全集の一環でした。ウィーン・フィルのほかニューヨーク・フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウと生前のマーラーと所縁のあった欧米の3つのオーケストラを起用したこの全集は、1985年の第9番を皮切りに、第7番・第2番・第4番と進み、この第5番が収録順序としては5曲目となりました。バーンスタインはこの1987年のうちに第1番・第3番の収録を終え、1988年には第6番を録音しており、その精力的な取り組みが印象に残ります。
一音一音が担う途方もない重量感
バーンスタインとウィーン・フィルは、まず1987年夏のザルツブルクとルツェルン音楽祭で第5番を演奏し、そのあと9月上旬からヨーロッパとアメリカを巡る演奏旅行に出て、フランクフルト、ロンドン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、アナーバー、ニューヨークでこの交響曲を連続して取り上げています。バーンスタインはウィーン・フィルと1972年に交響曲第5番を演奏しており、その演奏はユニテルによって映像収録されていますが、この時がこの曲の20年ぶりの演奏だったためマーラー独特の音楽語法に馴染んでいないウィーン・フィルを汗みどろになって叱咤激励し、嵐の渦巻くようなドラマティックな演奏を成し遂げていました。それと比べると、この15年後の演奏はむしろ泰然自若の趣き、とはいっても、感情の動きは抑制されるのではなくより深く濃密になっていて、一音一音が途方もない重量感を担っており、マーラーが作品に込めた感情の動きは実に鮮明に表出されています。第2楽章4:26〜のチェロ・パートに込められた嘆きの深さ、第4楽章アダージェット全体の心が震えるような繊細さ、第5楽章コーダのクライマックス(13:51〜)での極端なアラルガンドなど、晩年のバーンスタインならではの巨大な表現があちこちに見られます。バーンスタインという音楽家の芸術と人間性の全てが注ぎ込まれたような記念碑的な名演といえましょう。
セッション録音と聴き間違うほどの完成度の高さ
この録音は、1987年9月6日と7日、フランクフルトのアルテ・オーパーにおける2回のコンサートのライヴ・レコーディングをもとにリミックス・編集されたもので、オリジナルの収録は24トラックで行なわれました。1981年に開場したこのホールは、もともと19世紀末に建てられ第2次大戦中の空襲で破壊されたフランクフルト歌劇場の外観を再現しているため「アルテ・オーパー(旧歌劇場)」という名称が使われており、内部は2434席のモダン・コンサートホールで、フランクフルトの中心的な演奏会場です。このホールでのマーラー録音といえば、エリアフ・インバルとフランクフルト放送交響楽団との交響曲全集(DENON)が知られており、コンサートで聴くイメージを家庭での試聴環境で再現することを主眼に置いたワンポイント風の音作りが高い評価を得ましたが、このバーンスタイン盤はインバル盤とは対照的に、マルチトラック収録の長所を極限まで生かし、オーケストラの多彩な各パートの明晰さをそのままにステレオにミキシングされているため、トゥッティになってもマーラーのオーケストレーションの微細な動きを精緻に聴き取ることが可能です。演奏後の拍手はなく、演奏者や聴衆のノイズなども極力取り除かれているため、セッション録音と聴き間違うほどの完成度の高さが保たれているのもドイツ・グラモフォンのバーンスタインのライヴ録音に共通する特徴です。発売以来今回が初めてのリマスターとなります。今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、新たに構築した「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
『20世紀後半のマーラー評価の見事な結実』
「遅いテンポをバーンスタインは、作品への共感を心置きなく表現するために使う。ていねいに、いつくしむように、その世界を掘り下げて。たくましさや鋭さはニューヨーク・フィルとの旧盤に比較して後退したことも否めないが、その反面、意欲余っての力みや作りが姿を消し、穏やかで深い音の雰囲気がかえって強い説得力を持って、われわれをマーラーの内面へと導いてゆく。(…)自然の雰囲気を豊かに踏まえながら、嬉々として大波のように合奏するウィーン・フィル。バーンスタインはもはや、マーラーからことさらに分裂的な、シニカルな表現を取り出そうとしない。そうしなくても充分なほど、彼はマーラーの時間を長く生き、マーラーの音楽と人生の喜怒哀楽を共にしてきたのである。」
日本初出盤ライナーノーツより
「第1楽章と第2楽章から形成される第1部で、バーンスタインが表現したものは未聞の沸騰である。音楽には内包された感情のあらゆる動きが直接音化され具現化される様は、筆舌に尽くしがたい激しさを持っている。アダージェットか生の希望に燃えたロンド・フィナーレに入っていくあたり、壮絶なまでに、死を乗り越えた人間の喜びがあふれている。」
『レコード芸術』1988年10月号 推薦盤
「バーンスタイン盤はその個性の強さで際立つものといえよう。そのゆったりとしたテンポによる濃厚、粘着質的な語り口は、ただでさえマーラーが苦手という人は辟易としてしまうだろうが、強い共感に満ちており、聴きとるべきものは多い。」
『名盤大全・交響曲編』1998年
「バーンスタインのマーラーはいまも特別な輝きを持っている。この第5番では、いわばバーンスタンのマーラーの最終形が聴ける。指揮者の個性は明らかだが、ここではもう強引に自分のほうに引き寄せたりせず、信頼するウィーン・フィルに多くを委ねている。遅めのテンポで、あくまで濃厚に、マーラーの世界が形作られてゆく。この曲の申し分のない規範を作ろうとしているかのよう。実際バーンスタンが中心となった20世紀後半のマーラー評価は、ここで見事に結実しているのではないか。」
『クラシック名盤大全・交響曲・管弦楽曲[上]』2015年
[収録曲]
◇グスタフ・マーラー(1860-1911) - Gustav Mahler
交響曲 第5番 嬰ハ短調
Symphony No. 5 in C sharp minor
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第1部 - Erster Teil |
[1] |
第1楽章:葬送行進曲(正確な歩みで、厳粛に、葬列のように)
1. Trauermarsch. In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt |
[2] |
第2楽章:嵐のように激して、よりいっそう激しく
2. Stürmisch bewegt. Mit größter Vehemenz |
第2部 - Zweiter Teil |
[3] |
第3楽章:スケルツォ(力強く、あまり速くなく)
3. Scherzo (Kräftig, nicht zu schnell) |
第3部 - Dritter Teil |
[4] |
第4楽章:アダージェット(きわめてゆったりと)
4. Adagietto. Sehr langsam |
[5] |
第5楽章:ロンド・フィナーレ(アレグロ―アレグロ・ジョコーソ、いきいきと)
5. Rondo-Finale. Allegro – Allegro giocoso. Frisch |
■詳細
ホルン:フリードリヒ・プファイファー(第3楽章)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:レナード・バーンスタイン
録音 |
1987年9月、フランクフルト、アルテ・オーパーでのライヴ・レコーディング |
初出 |
Deutsche Grammophon 423 608-2(1988年) |
日本盤初出 |
ドイツ・グラモフォン F32G20247(1988年9月25日) |
オリジナル・レコーディング
(ヤープ・デ・ヨング真空管機材による録音) |
[プロデューサー]ハンノ・リンケ
[ディレクター]ハンス・ヴェーバー
[バランス・エンジニア]カール・アウグスト・ネーグラ、ヘルムート・バーク |
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