弱冠32歳の若きケルテスが、名門ウィーン・フィルと共に描き出す、
録音史上最もドラマティックな「新世界」。
名指揮者ケルテスのデッカ・デビュー盤
イシュトヴァン・ケルテス(1929.8.28〜1973.4.16)は、ニキシュにはじまり、フリッチャイ、オーマンディ、セル、ショルティと続くハンガリー指揮界の栄光を受け継ぐホープとして、1960年代の指揮界を席巻し、アウグスブルク歌劇場音楽総監督(1960〜1963) 、ケルン市立歌劇場総監督(1964〜1973)、ロンドン響首席指揮者(1965〜1968)などを歴任。録音面でも、デッカにウィーン・フィル、ロンドン響、イスラエル・フィルなどと数多くの名盤を残しましたが、1973年、テル・アヴィヴで水泳中に溺死し、その早世を惜しまれました。当アルバムは、ケルテスにとって名門デッカ・レーベルでのデビューを飾った記念碑的録音で、特に日本では、1961年にキング・レコードから発売されて以来、ライナー/シカゴ響のRCA盤、バーンスタイン/ニューヨーク・フィルのコロンビア盤、セル/クリーヴランドのエピック盤、カラヤン/ベルリ・フィルのDG盤など並んで、アナログ時代の「新世界」の定番として聴き継がれてきました。当時32歳という若さのケルテスが、老舗のウィーン・フィルの奥深い響きを生かしつつ、ドラマティックなテンポの変化を加え、ティンパニの壮絶な強打や金管の咆哮によって、作品に生気をみなぎらせてゆく様は、まるでライヴ演奏を思わせるほどのスリリングな熱気を孕んでいます。ケルテスは、5年後の1966年に、ロンドン響を指揮してドヴォルザークの交響曲全集の一環としてこの交響曲を再録音し、ウィーン・フィル盤の若々しいダイナミズムの代わりに円熟味を獲得した演奏を成し遂げていますが、日本の音楽ファンの間ではウィーン・フィル盤の方を愛好する方がいまだに多くいらっしゃいます。弊社SuperAudio CDハイブリッドシリーズ(ESSD-90015)でも2008年に発売し、2009年にはアナログレコード(ESLP-10002)も発売いたしました。今回は14年ぶり、2度目のアナログレコード化となります。
デッカ・サウンドを生み出した名ホール、ゾフィエンザールにおける名録音
プロデュースは、デッカでのケルテスの録音の多くを担当したレイ・ミンシャルで、ジェームズ・ブラウンとのコンビで収録に当たっています。1956年以来1980年代にいたるまで、デッカのウィーンにおけるステレオ・セッションのホームグラウンドとなったゾフィエンザールは、19世紀前半に浴場として建てられ、その後舞踏会場として使われていた建物で、生前のヨハン・シュトラウスが頻繁に舞台に立っていました。この会場は、細部の音まで明晰に収録・再現しようとするデッカのレコーディング・ポリシーに最適で、伝説的なショルティの《ニーベルングの指環》をはじめとする、デッカ・サウンドの代名詞となった名録音が次々と生み出された録音場所です。この「新世界」も「ゾフィエンザールでの名録音」の系譜につながる1枚で、粒立ちのよいティンパニ、香ばしい輝きを放つ金管、ウィンナ・オーボエやクラリネットなど個性的な響きを披露する木管、シルキーでしかも厚みのある弦楽パート(特にゴリゴリとした低弦)などをくっきりと立体的に再現し、録音後、ほぼ半世紀を経た現在も、その鮮明なサウンドの魅力は色あせていません。
現在考え得る最高の状態でアナログレコードに
今回のアナログレコード制作にあたっては、オリジナルマスターより、新たにアナログレコード専用のマスタリングを行いました。マスタリングにあたっては、新たに構築した「Esoteric Mastering」を使用、入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、徹底して高音質化を目指したマスターを作成しました。
アナログ・カッティングは、ミキサーズラボ社にて、アナログ最盛期の名機、ノイマン社製カッティング・レースVMS80を使用しました。同機はアナログレコード最盛期に西ドイツで製造され、現在日本国内では2台しか稼働していません。アナログ・カッティング用マスターの送り出しには、「Esoteric Mastering」の機材を使用。ミキサーズラボ社のご協力を得て、カッティングルームに「Esoteric Mastering」の機材を持ち込み、出力をノイマン社製カッティング・コンソールSP79Cにダイレクトに接続。コンソールのイコライザーを使わずに、「EsotericMastering」サウンドをそのまま、カッティング工程へ送り込みます。カッティングは、ミキサーズラボ社のカッティング・エンジニア 北村勝敏氏。匠の手腕をマスター盤に注ぎ込んで頂きました。
現在では、レコード・プレス用のマスター盤カッティングのみで、試聴のためだけにラッカー盤をカッティングする事は稀ですが、エソテリックでは音質を追及するため、コンソールへの伝送方式を変えながら複数のラッカー盤を作成しました。作成した複数のラッカー盤は、エソテリック・マスタリング・センターへ持ち帰り、ESOTERICのアナログターンテーブルGrandioso T1で試聴・音質確認を行い、最適な伝送方法を決定しました。
上記のように徹底して、アナログの音にこだわりを込めて作成しました。その結果オリジナルマスターのもつ情報を伸びやかなサウンドでアナログレコード化することに成功しています。
あらゆる要素を兼備した、一つの理想的な「新世界」(初出LP評より)
堂々たる構えの大きさと厚みのあるオケの響かせ方は、この曲をシンフォニックにとらえようとした結果だろうが、こうした行き方ではカラヤンなどよりずっと素晴らしい。それは単に交響曲的な解釈というに止まらず、そこにあらゆる多彩な要素が含まれているからだ。テンポの動きはかなり大きいし、又多いが、それがある場合には強烈に曲を盛り上げ、又ある場合には懐かしい情緒を感じさせながらしみじみと歌うのである。又弦楽器はウィーン・フィルの美点を充分に生かして、例の優美な憧れのニュアンスを心ゆくまで表現し、反対に金管にはウィーンとは思えぬほどの荒削りな強奏を要求して土俗的な曲の一面を描いてゆく。それはティンパニの強打からくる迫力にも表れているのだ。(・・・)実に見事な、あらゆる要素を兼備した、一つの理想的な「新世界」といわざるをえない」。 宇野功芳『LP手帖』1962年より
[収録曲]
◇アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)
■交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
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[Side A] |
[1] |
第1楽章:アダージョ - アレグロ・モルト |
[2] |
第2楽章:ラルゴ |
[Side B] |
[3] |
第3楽章:モルト・ヴィヴァーチェ |
[4] |
第4楽章:アレグロ・コン・フォーコ |
[詳細]
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:イシュトヴァン・ケルテス
録音 |
1961年3月22日〜24日、ウィーン、ゾフィエンザール |
LP初出 |
ステレオ盤:SXL-2289(1961年) モノラル盤:LXT 5652(1961年) |
日本盤LP初出 |
ステレオ盤:SLC 1095(1962年5月)モノラル盤:LY 5027(1962年7月) |
オリジナル・レコーディング |
[レコーディング・プロデューサー]レイ・ミンシャル
[レコーディング・エンジニア]ジェームズ・ブラウン |
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