一音に重み・凄みを湛え、聴く者を音楽の深みへと誘うツィマーマンのショパン。
エソテリックによる名盤復刻シリーズ SACDハイブリッドソフト
エソテリック株式会社は、エソテリックによる名盤復刻シリーズとして Super Audio CDハイブリッド・ソフト 3作品『マーラー:交響曲第4番』『ショパン:バラード(全4曲)、舟歌、幻想曲』、および『チャイコフスキー:交響曲第4番、ストラヴィンスキー:バレエ音楽《火の鳥》全曲(1910年原典版)』を販売開始致します。
今も聴き逃せないピアニスト、ツィマーマン
現在、世界のクラシック音楽界で最も高い評価を受けているピアニストの一人、クリスティアン・ツィマーマン(1956.12.5生まれ)。1975年のショパン国際ピアノ・コンクールで史上最年少の18歳で優勝して世界的な注目を浴び、以来第一線で活躍しています。最近では、昨年「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞して日本でも話題になりました。ツィマーマンは、自分が指向する完璧な演奏の実現、特に楽器を完全に自分のコントロールできるようにしておくことにこだわり、演奏に際しては自分の楽器やアクションを世界中に運搬し、さらに馴染みの調律師とともに演奏会場の特性に合わせて調整を重ねることで自己の理想とする演奏を目指すという徹底ぶりでも知られています。取り上げるレパートリーの選択や録音にも慎重で、実際に演奏会で取り上げるまでに長い時間をかけたり、録音しても発売しなかったり、LPで発売したものでもCD化を認めない場合もあります。
ショパン・コンクールの覇者による待ちに待ったバラード全集
それゆえショパン・コンクール優勝の直後から始まったツィマーマンの録音は、数こそ少ないものの、その1枚1枚が極め尽くされた聴きごたえのある名盤揃い。1980年には演奏活動を中断して自己の音楽づくりを見つめなおすことで初期のみずみずしく姿勢のよい演奏を脱し、一音一音に重み・凄みを湛えた演奏を聴かせるようになりました。1980年代半ば以降現在に至るこのツィマーマンの充実の開始を告げたのが、1987年録音のショパンのバラード全曲でした。ショパン・コンクールのライヴ録音(1975年)やポーランドで録音されたリサイタル・アルバム(1977年)、ワルツ集(1978年)、ジュリーニ指揮ロス・フィルとのピアノ協奏曲2曲(1978・79年)など、ショパン・コンクール優勝者ゆえに求められ続々と実現してきたショパン録音も見事なものではありましたが、このバラード全曲では、明敏に磨かれた音と表現に一層の深みを加え、間然とするところのない見事なピアニズムを成し遂げています。ツィマーマンはショパンの音楽を偏狭なローカリズムから完全に開放し、20世紀後半のショパン解釈史に明確な一歩を刻む名盤を生み出したのです。
感情の起伏の激しさや深さを実に克明に表出
先ごろ当シリーズでご紹介した1999年録音の2曲のピアノ協奏曲で多用された伸縮自在のテンポやダイナミックスとは異なり、このバラード全曲(および併録された舟歌と幻想曲)ではよりストレートな表現で作品の核に迫っています。ツィマーマンはバラードについて「ショパンはバラードという形式を、彼が愛国的な感情の表現のためにマズルカやポロネーズを用いたのと同じように選んだわけではありません。それにもかかわらず、バラード集には愛国的な奮闘に満ちた素晴らしい感動があります。これらの作品においては、愛国心が感情に訴えます」と語っていますが、ツィマーマンの演奏は、ショパンが作品に盛り込んだ感情の起伏の激しさや深さを実に克明に表出しながらも、決して感傷に陥らないストイシズムが貫かれています。ショパンがインスピレーションを得たミツキエヴィチの詩の内容も理解しつつも、具体的な描写性よりも音楽の構造の明晰さを解き明かすことを重視しているかのようです。実に強靭なタッチ、無尽蔵に変化するニュアンス、類稀な美音・・・いずれもツィマーマンからでしか聴き得ない独自の音楽。ショパンの最高傑作との呼び声も高い舟歌や複雑な構造を持つ幻想曲でも、同じ視点での緻密な演奏解釈が繰り広げられています。
一音一音に込められた繊細かつ大胆なニュアンス、ダイナミック・レンジの幅広さを堪能
録音は、ドイツ西部の都市ビーレフェルトにあるルドルフ=エトカー=ハレのグロッサーザール(大ホール)で行われました。ここは1928〜30年にかけて建設され、ドイツの総合食品メーカーとしては最大手の「ドクター・エトカー」創業者の孫ルドルフ・アウグスト・エトカー(1916〜2007)の名を冠し1930 年10 月にオープンしたホール。約3200席の客席は当初から優れた音響で知られ、第2次大戦の戦火も免れ、1955年に行われた20人の指揮者によるアンケート調査では世界のベスト10に入るとされたほどでした。録音会場としては1950年代から時折使用され、1969年にはアンタル・ドラティ指揮フィルハーモニア・フンガリカのハイドン:交響曲全集の一部(第49〜72番)の収録(デッカ)が行われました。ドイツ・グラモフォンは1980年代後半に、ツィマーマンのこのアルバム(1987年)を皮切りに、ミケランジェリのドビュッシー:前奏曲第2巻(1988年)、ツィマーマンとチョン・キョンファとのR.シュトラウスとレスピーギのヴァイオリン・ソナタ(1989年)、シューベルトの即興曲集(1990年)などの録音に使っています。このアルバムでのツィマーマンの演奏は、大きな会場とは思えないほど親密なサウンドで、大き目の音像でくっきりと捉えられ、ツィマーマン自身の呼気も含め、一音一音に込められた繊細かつ大胆なニュアンス、ダイナミック・レンジの幅広さを手に取るように味わうことができます。優れたデジタル録音であるため、リマスターされるのは発売以来今回が初めてです。今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
『冷徹かつ省察的なアプローチで叙事詩的な面に焦点を当てたバラード』
「一人の作曲家を過度に認識する危険を避けたツィマーマンの開かれた音楽との付き合いが、ここでもショパンに優れて内省的な演奏を実現させている。ショパン・コンクール優勝者のレッテルだけで彼のショパン演奏を妄信されることを嫌って、あえてショパンからは距離を保っていた観のあるツィマーマンだけに、彼が今この作曲の作品を選択した意味合い、重みも十分に納得される。繊細極まりなく、しかも決して感傷に陥らない彼のここでのショパン演奏への賛辞は尽きない。」
日本初出盤ライナーノーツより 1988年
「このディスクは彼にとって9 年ぶりのショパンのソロ・アルバムだった。いかにも力を入れこんだ感じのホットな演奏が聴ける。メインの『バラード』全4曲については、彼は細部を緻密に仕上げながら、それぞれの『バラード』のロマンティシズムや物語に対する解釈を明らかにしている。そしてスリリングな場面を散りばめたドラマティックな展開によって聴かせどころを作り、聞き手の感覚に鋭く訴える。」
『クラシック不滅の名盤800』1997年
「感覚のおもむくままに弾くショパンとは一線を画しているのがツィマーマンだ。穏やかで、時には冷静で、よく吟味された美しい音色だけでなく、音楽の運びも崩さない。一歩間違えれば正統で真っ当で退屈ということになる。つまり一歩間違えないところにツィマーマンの真骨頂がある。特に1987年に録音されたこのバラード4曲は、正当にして退屈な演奏から離れることほんのわずかだ。しかしそれだけでなんとファンタジーが生き生きと感じられ、抒情性に潤いがあり、劇的な力を持ってしまうことだろう。正道を行くという、今はとても困難なショパンの演奏を、ツィマーマンはここで見事に歩んでいる。」
『クラシック名盤大全 器楽曲編』1999年 「ツィマーマンのこの録音は冷徹かつ省察的なアプローチでもってバラードの叙事詩的な面に焦点を当てた演奏だ。綿密な全体設計のもと、細部の表現を徹底的に掘り下げながら、各曲を的確に性格づけている。決してロマン的な表情や情熱性に欠けるところはないものの、感情に溺れることなく、知的なコントロールで彫琢された思索的な趣を示している点がツィマーマンらしい。同様なことは『幻想曲』にもいえ、冒頭の意味深長な運びからして理念的な独自の解釈がうかがえる。『舟歌』も一つひとつの音に至るまで知的な配慮を行き届かせたアプローチがクリスタルな詩情を生み出した名演である。」
『クラシック最新不滅の名盤1000』2018年
[収録曲]
◇フレデリック・ショパン(1810〜1849)
バラード(全4曲) |
[1] |
第1番 ト短調 作品23 |
[2] |
第2番 ヘ長調 作品38 |
[3] |
第3番 変イ長調 作品47 |
[4] |
第4番 ヘ短調 作品52 |
[5] |
舟歌 嬰ヘ長調 作品60 |
[6] |
幻想曲 ヘ短調 作品49 |
[詳細]
クリスティアン・ツィマ−マン(ピアノ)
録音 |
1987年7月22日〜26日、ビーレフェルト、ルドルフ=エトカー=ハレ、グロッサーザール |
初出 |
423 090-2(1988年) |
日本盤初出 |
F32G 20258(1988年10月25日) |
オリジナル・レコーディング |
[エグゼクティヴ・プロデューサー]ハンノ・リンケ
[レコーデイング・プロデューサー、バランス・エンジニア]ヘルムート・バーク |
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