テクニシャンのマゼールが、優れた機能を持つクリーヴランド管を見事に駆使して、絢爛豪華なオーケストレーションを見事に表現。世界初Super Audio CDハイブリッド化。
エソテリックによる名盤復刻シリーズ SACDハイブリッドソフト
エソテリック株式会社は、エソテリックによる名盤復刻シリーズとしてSuper Audio CDハイブリッド・ソフト3作品「ブラームス:交響曲第2番、大学祝典序曲、悲劇的序曲」「レスピーギ:交響詩《ローマの祭り》《ローマの松》リムスキー=コルサコフ:組曲《金鶏》」、および「J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲」を販売開始致します。
多彩な足跡を残したロリン・マゼール
ロリン・マゼール(1930〜2014)ほど多彩な足跡を残した音楽家も少ないのではないでしょうか。5歳でヴァイオリンを始め、7歳で指揮を学び、8歳でニューヨーク・フィルを指揮した神童としてスタート。戦後は奨学生としてヨーロッパに渡って知見を広め、瞬く間に指揮者としての頭角を現し、音楽の中心地のひとつであったベルリンでオーケストラとオペラの両方のポストを兼任し、カラヤンに対抗する存在となりました。1972年にはクリーヴランド管弦楽団の音楽監督に就任して米国にも音楽的基盤を広げ、以後欧米の名だたるオーケストラやオペラのポストを歴任。どんな複雑な音楽でも明晰に振り分けることのできる卓越した指揮技術と鋭敏な耳、超人的な暗譜能力を備え、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートではヴァイオリンを披露、オペラを始めとする作曲にも力を入れ、社会慈善活動にも身を投じ、自らの地所に音楽祭を創設し若手にも手を差し伸べるなど、常に時代の最先端を歩む音楽家としての活動を怠らない人物でした。
「クリーヴランドのローラーコースター」と称されたクリーヴランド時代
1970年代のマゼールの活動は、1972年に音楽監督に就任したクリーヴランド管を中心に据えて展開していきます。第2 次大戦後に同管の躍進を支えたジョージ・セルが1970年に急逝した後、同管はセルが後継者とみなしていたピエール・ブーレーズを音楽顧問に据えますが、根っからのオーケストラ・ビルダーであったセルとは音楽性を異にし、またブーレーズは同時にニューヨーク・フィルとBBC響の音楽監督を務めていたためクリーヴランドには時間がさけず、暗中模索が続いていました。1972年のマゼールの就任は、そうした状況を終わらせ、クリーヴランド管に第2の黄金期をもたらすことになり、「クリーヴランドのローラーコースター」と称賛されます。マゼールは、セルがほとんど取り上げなかった20世紀音楽を積極的に取り上げてプログラム・ビルディングを刷新し、子供向けのコンサートを開催し地域との交流を活性化させ、スポンサーを呼び込み、定期会員数を劇的に増やし、国内外のツアーを再開し、あらゆる面でオーケストラを活性化させたのです。そしてマゼールの録音を多数発売してきたデッカとの録音契約を実現させ、音楽監督就任シーズンの終わりに、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」全曲版を録音し、やがて実りあるディスコグラフィを築き上げることになります。マゼールはクリーヴランド在任後半の1979年の記者会見で「私がクリーヴランドに着任した時は、定期会員はチケット収入の28%しかなく、レコーディング契約も海外ツアーもありませんでした。団員のサラリーも薄給で負債もあった。8年後の今、私たちのLPレコードは60点にのぼり国際的な賞をいくつもいただき、定期会員は83%に上昇し、国内外のツアーの要請は引きも切らない。そして最も大切なのは、この16年間で初めてオーケストラが黒字に転じた、ということなのです」と誇らしげに語っています。
絢爛豪華なオーケストレーションの魅力を余すところなく収録
デッカによるクリーヴランド管との録音は、メータ/ロス・フィル、ショルティ/シカゴ響に続く3つ目の米国メジャー・オケとの契約となったもので、アメリカにおける同社(ロンドン・レーベルで発売)のシェア拡大を狙った施策の一環でした。レパートリーも、マゼールが最も得意とした20世紀のオーケストラ作品が中心に置かれ、複雑で色彩的なオーケストレーションがデッカならではの明晰極まるサウンドで収録されたそれらのアルバムは、瞬く間にオーディオファイルの間で高く評価されるようになりました。1976年と1979年に収録されたレスピーギの交響詩「ローマの祭り」「ローマの松」とR=コルサコフの組曲「金鶏」もそうしたアルバムの一つです。レスピーギでは、イタリアらしい実に雰囲気豊かな明るめの開放的なサウンドの起伏が捉えられ、レスピーギがあちこちに仕掛けたドラマティックな音響効果を伴う聴かせどころが丁寧な筆致で明らかにされていきます。「金鶏」ではレスピーギとは対照的に濃密なロシア風かつオリエンタルなエキゾシチズムに満ちたサウンドが作品の魅力を余すところなく伝えています。
空間性を感じさせるマソニック・オーディトリアムでの録音
録音は、クリーヴランドのマソニック・オーディトリアム(現在の名称はクリーヴランド・マソニック・テンプル)で行われました。1921年に建設されたこのホールは、クリーヴランド管(1918年創設)の初期の本拠地になった会場で、ロックやポップスのコンサートも行われる多目的ホールであったため、1931年にセヴェランス・ホール(座席数2,000)が開場し本拠地となってからは時おりの特別演奏会で使われる程度でした。セヴェランス・ホールの音響を愛したセルはエピック/コロンビアの録音をセヴェランス・ホールで行なっていましたが、マソニック・オーディトリアムは座席数が2,500で空間がより大きく響きも豊かであるため、マゼール時代以降の録音会場に選ばれ、1977年に始まるコロンビアへの録音、1979年に始まるテラークへの録音も含めて、セッション録音ではドホナーニ時代に至るまでほぼ一貫して使われていました。会場の空間性の大きさは、「祭り」の第1曲や「松」の第4曲で登場する金管のバンダ(この録音では左チャンネルに配置)の距離感が見事に音響として演出されている点や、「松」第3曲で事前録音の鳥の鳴き声の響き方、「祭り」と「松」両方に使われているオルガンの圧倒的な存在感からもお分かりいただけると思います。大きな空間性を感じさせつつも、広大かつ自然なダイナミックレンジや音の伸び、さらには各パートの楽器の明晰さを確保できているのはデッカの高度なマルチ収録(デッカ自作のSTORMというミキシング・デスクを使って24チャンネルで行われた模様)とミキシング技術の賜物で、同じようにマルチ収録を行っていたコロンビア録音のサウンドがギラギラした人工的なサウンドに傾きがちだったのとは対照的。
今回のアルバムがCD化されたのは、レスピーギの2曲についてはCD初期の1986年で、その後2000年に「デッカ・レジェンド」シリーズで24ビット・リマスターで再発され、この時に「金鶏」が初CD化されました。今回のエソテリックでの発売は24年ぶりのリマスターとなり、初Super Audio CDハイブリッド化となります。今回のハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering」を使用。 入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。
「極めて華麗かつシャープな演奏」「クリーヴランド時代のマゼールを代表するレコード」
– レスピーギ –
「いろいろと問題の多い、あくまでマゼール調のレスピーギである。あちこちで引っ掛かりながらも、マゼールの強引な力で押し切られてしまう。そして2曲中では音楽自体の作り方のせいもあって《祭》の方が成功しているといえる。いわば、トスカニーニやオーマンディが正統派の名演とすれば、これは異端の名演というべきである。」
『レコード芸術』1977年7月号、推薦盤
– レスピーギ –
「一言でいえば極めて華麗かつシャープな演奏である。オーケストラの色彩感は絢爛たる美しさを誇ると同時にくっきりと鮮明であり、旋律の歌わせ方やリズムの処理も常に明快で鋭い。スコアの読みは冷静で、気分的にはややそっけないと思わせるほどクールな部分もある。しかし最終的にはマゼールの緻密な計算が功を奏して、それぞれの曲は全体として寸分の隙もないほど強固なまとまりをもっている。」
『クラシックレコードブック1000・管弦楽曲編』1980年
– リムスキー=コルサコフ –
「マゼールのレパートリーの幅広さとクリーヴランドのヴィルトゥオーゾ・オケとしての機能と適応性の豊かさを楽しめる1枚。オケのソロイスティックな魅力を引き出すとともにマゼール自身のイディオムを明確に織り込んでいる。競合盤が少ないということを超えた、優れた演奏の楽しさを味わわせてくれる。」
『レコード芸術』1981年3月号、推薦
– リムスキー=コルサコフ –
「テクニシャンのマゼールが、優れた機能を持つクリーヴランド管を見事にドライヴしている。その手際の良さは、ヘヴィな内容の作品を演奏し終わっても、彼の鼻の頭には汗一つ出ていないといった感じだ。それでいながら、R=コルサコフの音楽に必要な多彩極まりない色彩、エネルギッシュな表現力などといった音楽には、何一つといって足りないものはない。雄弁で、しかも整然としたバランスを保った演奏だ。クリーヴランド時代のマゼールを代表するレコードの一つと言えよう。」
『クラシック名盤大全・管弦楽曲編』1998年
[収録曲]
◇オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)
[1-4] |
交響詩《ローマの祭り》 |
[5-8] |
交響詩《ローマの松》 |
◇ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)
[詳細]
クリーヴランド管弦楽団
指揮:ロリン・マゼール
録音 |
[1-8]1976年5月10日〜14日
[9-12]1979年10月
クリーヴランド、マソニック・オーディトリアム |
初出 |
[1-8]DECCA SXL 6822(1976年)
[9-12]DECCA SXL6966(1980年) |
日本盤初出 |
[1-8]London SLA1128(1977年6月21日)
[9-12]London K25C 64(1981年1月21日) |
オリジナル・レコーディング |
[レコーディング・プロデューサー]
[1-8]マイケル・ウールコック
[9-12]ジェームズ・マリンソン
[バランス・エンジニア]
[1-8]ケネス・ウィルキンソン
[9-12]マルティン・アーキンソン |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。