豊麗・優美なウィーン・フィルの響きを生々しく捉えた王道デッカ・サウンドの真髄。
DVOŘÁK Symphony No.8 KARAJAN
[基本情報]
- 品番:ESLD-10005
- 仕様:アナログLP、180g重量盤
- レーベル:DECCA
- 音源提供:ユニバーサルミュージック合同会社
- ジャンル:交響曲
- 厚紙シングルA式ジャケット
一時代を画したカラヤンのデッカ録音プロジェクト
ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989)。レコード録音に対して終生変わらない情熱を持って取り組んだパイオニア的存在であり、残された録音もSP時代からデジタル録音まで、膨大な量にのぼります。
その中でカラヤンが一つの頂点を迎えたのは、1955年にベルリン・フィルの常任指揮者、翌1956年にザルツブルク音楽祭およびウィーン国立歌劇場の芸術監督に就任し、文字通りヨーロッパ・クラシック音楽界の「帝王」と目されていた時期でした。録音面でも、1950年代初頭から継続しているロンドンでのフィルハーモニア管とのEMIへの録音、ベルリン・フィルとは1959年からドイツ・グラモフォン、ウィーン・フィルとはデッカへの録音がスタートし、ちょうどステレオ録音が導入されて活気付いていたレコード市場を席巻する形になりました。中でも、名プロデューサー、ジョン・カルショーとのコラボレーションによって、ウィーン・フィルと進められたデッカへの録音では、スタンダードなシンフォニーのみならず、「ツァラトゥストラはかく語りき」や「惑星」のパイオニア的録音も含む多様なオーケストラ曲や綺羅星のような豪華キャストをそろえたオペラ全曲盤が続々と生み出されました。その中でも特に充実した演奏と評価の高い1961年録音のドヴォルザークの交響曲第8番を今回Esoteric MasteringによるアナログLPとして復刻いたします。
ウィーン・フィルとの蜜月を刻印した優美な演奏
カラヤンがウィーン・フィルを初めて指揮したのは1934年8月のザルツブルク音楽祭ですが、両者の活動が本格化するのは第2次大戦後のことで、1946年以降、演奏会と録音(EMI)との両輪で密接なかかわりを持つようになりました。1959年秋には ウィーン・フィル初の日本も含むアジア、アメリカ、カナダへの大規模なワールド・ツアーに同行、1960年のザルツブルク音楽祭では祝祭大劇場の杮落しで共演、また「ばらの騎士」の映像も収録するなど、カラヤンとウィーン・フィルとの関係が急速に接近しています。このドヴォルザークの第8番が録音された1961年は、5月にデル・モナコ、テバルディとの「オテロ」全曲盤、6月にレオンタイン・プライスとのクリスマス・アルバムという名盤を相次いで録音し、9月に国立歌劇場のシーズンが始まると、オペラ上演と平行して、ウィーン・フィルとはドヴォルザーク第8番のほか、ブラームスの交響曲第3番、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」組曲、グリーグの「ペール・ギュント」組曲、アダンのバレエ「ジゼル」、ホルストの「惑星」など、LPにして5枚分にも相当する録音を集中的に行なっています(同じ時期の定期演奏会では録音曲目であるドヴォルザークの第8番を取り上げています)。カラヤンにとっては初録音となったドヴォルザーク第8番にもその蜜月ぶりが存分に反映しており、カラヤンの颯爽たる指揮に敏感に反応しつつも、伸びやかに自らの音楽を奏でるウィーン・フィルの魅力的な響きが聴きものです。
最高の状態でのアナログレコード化が実現
ステレオ時代のデッカの常駐ホールだったウィーンのゾフィエンザールで行われたセッションは、ゴードン・パリーがエンジニアを担当し、ウィーン・フィルの特徴的な響きを生々しく捉えています。ホールの残響が多い本拠地ムジークフェラインに比べて、天井が高く、細部の音まで明晰に収録できる環境はデッカのレコーディング・ポリシーに最適で、このドヴォルザークもそうしたデッカによる最上の録音のお手本のような仕上がりになっています。第1楽章を導入するチェロとホルンの美しく溶け合った響きに始まり、エネルギッシュな第4楽章のクライマックスに至っても決して美観をはみ出さないのがウィーン・フィルならでは。ちなみにカラヤンは、この1961年9月〜10月のセッションのあと、RCAのために録音された「トスカ」と「カルメン」の全曲盤を除くと、ウィーン・フィルとは1965年までにLP2枚分を録音したにすぎず、1961年暮れから始まるベートーヴェンの交響曲全集、1963年に始まるブラームスの交響曲全集など、ベルリン・フィルとのドイツ・グラモフォンへの録音の方に、より大きな比重が置かれるようになっていくのです。今回のアナログレコード制作にあたっては、オリジナルマスターより、新たにアナログレコード専用のマスタリングを行いました。マスタリングにあたっては、新たに構築した「Esoteric Mastering」を使用、入念に調整されたESOTERICの最高級機材Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、徹底して高音質化を目指したマスターを作成しました。
アナログ・カッティングは、ミキサーズラボ社にて、アナログ最盛期の名機、ノイマン社製カッティング・レースVMS80を使用しました。同機はアナログレコード最盛期に西ドイツで製造され、現在日本国内では2台しか稼働していません。アナログ・カッティング用マスターの送り出しには、「Esoteric Mastering」の機材を使用。ミキサーズラボ社のご協力を得て、カッティングルームに「Esoteric Mastering」の機材を持ち込み、出力をノイマン社製カッティング・コンソールSP79Cにダイレクトに接続。コンソールのイコライザーを使わずに、「Esoteric Mastering」サウンドをそのまま、カッティング工程へ送り込みます。カッティングは、ミキサーズラボ社のカッティング・エンジニア 北村勝敏氏。匠の手腕をマスター盤に注ぎ込んで頂きました。
「優美な歌と音色の魅惑に満ちた、カラヤンのウィーン時代の最高の成果の一つ」
「この時期のウィーンのカラヤンは、彼としてももっとも良い演奏を残した年代にいた。この《どぼっぱち》も、ずっと後のベルリンのより数段も上等な演奏である。ベルリンでの演奏の、技に溺れた、やけに強弱の差を強調した、それでいて甘い砂糖漬けのような気持ち悪さは、このウィーンの演奏からはいっさい聴こえてこない。豊かに歌うヴァイオリンはウィーン・フィルならではの妙音で、それがあってはじめてこの交響曲の甘美さが本物になるのだ。また御近所ボヘミアのカラー表出にも土地柄が出ている。」
福永陽一郎『レコ芸別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.1交響曲編』1985年
「このウィーン・フィルとのドヴォルザークの8番は、高度なアンサンブルに加えて、優美な歌と音色の魅惑に満ちていた。カラヤンがウィーン国立歌劇場に在任して、ウィーン・フィルと緊密な仕事を続けていた時代の最高の成果の一つであると思う。その後の録音も見事だが、この演奏には華がある。」
岩下眞好『ONTOMO MOOK クラシック名盤大全・交響曲編』1998年
[収録曲]
アントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)
交響曲第8番ト長調Op.88
[Side A] |
第1部 |
[1] |
第1楽章 Allegro con brio |
[2] |
第2楽章 Adagio |
[Side B] |
[1] |
第3楽章 Allegretto grazioso – Molto vivace |
[2] |
第4楽章 Allegro ma non troppo |
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
[録音]
録音 |
1961年9月29日〜10月8日、1963年9月 ウィーン、ゾフィエンザール
※日付はONTOMOMOOK「カラヤン 全軌跡を追う」所収「ヘルベルト・フォン・カラヤン完全ディスコグラフィ」(佐々木豊編)による。 |
LP初出 |
SXL-6169(1965年4月) |
日本盤LP初出 |
SLC-1429(1965年8月) |
オリジナル・プロデューサー |
ジョン・カルショー |
オリジナル・レコーディング・エンジニア |
ゴードン・パリー |
[アナログレコード]
プロデューサー |
大間知基彰(エソテリック株式会社) |
アソシエイト・プロデューサー |
吉田譲(エソテリック株式会社) |
リマスタリング・エンジニア |
東野真哉(エソテリック株式会社) |
リマスター |
2023年12月 エソテリック・マスタリング・センター、「Esoteric Mastering」システム |
アナログレコード・カッティング |
北村勝敏(株式会社ミキサーズラボ) |
解説 |
浅里公三 |
企画・販売 |
エソテリック株式会社 |
企画・協力 |
東京電化株式会社 |
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