独自のMCバランス・カレント入力、光カートリッジ入力、バリアブル・イコライザー搭載
フォノアンプのフラグシップモデル
ESOTERICブランド創設35周年を記念した初のアナログ・ターンテーブルGrandioso T1は、革新的な「ESOTERIC MagneDrive System」の開発により、アナログ再生史に新たな足跡を刻みました。Grandioso E1は、T1に続くGrandiosoシリーズ・アナログ再生用コンポーネントの第二弾として開発された、フォノアンプのフラグシップモデルです。
Grandioso E1は、独自のバランス・カレント入力方式や、電源を別筐体とした完全バランス/完全ディスクリートのバリアブル・イコライザー・アンプ回路、光カートリッジへの対応など、アナログ再生のルネサンスと呼ぶにふさわしい技術革新により、今までにないリスニング体験をご提供します。
特徴
■MCカートリッジ本来のサウンドをそのまま引き出す独自のMCバランス・カレント入力
Grandioso E1は、MCカートリッジで針がレコードをトレースすることによってコイルに流れる「電流」をそのままバランス受けする独自のMCバランス・カレント入力(XLR)を3系統備えています。一般的にMCカートリッジは、MMに比べて高い電流出力を誇ります。出力電流を負荷抵抗で微小電圧に変換して入力する一般的な方式に比べ、MCカートリッジの発電エネルギーを最も効率的に、ロスなく取り出すことができるため、MCカートリッジが本来持っている音をありのままに、演奏のリアリティーをそのままに再現することができます。また、MCカートリッジとフォノアンプの負荷インピーダンスのマッチングを気にする必要もなく、常にMCカートリッジから最良のサウンドを引き出すことができます。
■MCバランス・カレント入力 – 技術解説
振動系が軽量化され、より微細な音楽情報をピックアップできるMCカートリッジは、MMにくらべて巻数の少ない小さなコイルを実装しています。そのため、出力電圧はMMよりはるかに低い1/20程度が一般的です。しかしながら、低インピーダンス・コイルと振動系の外に強力なマグネットを実装できるMCは、MMよりもはるかに高い電流を出力することができます。一般的な「電圧入力」の場合、本来の豊かな電流は負荷抵抗でMMの1/20程度の「微小電圧信号」に変換されることとなり、後段での大きな増幅にともなうS/Nの問題、抵抗による損失や、インピーダンス・ミスマッチによる音質の変化など、解決すべき数々の課題を生むことになります。対して、「MCバランス・カレント入力」では、MCカートリッジの豊かな出力電流をそのまま、ストレートにディスクリート構成のアンプに入力できるため、ロス無く、最も効率的に信号を取り出すことができます。また、MCカートリッジのコイルの両端(+/−)をバランス構成のアンプで受けることで、ノイズの影響を最小化し、高品位に増幅することができます。増幅素子には、本来電流を増幅するための素子であるトランジスター素子を採用することで、さらに設計の合理性を高めています。
■光カートリッジ専用入力
光カートリッジは、内部でLEDと受光部(PD:フォトダイオード)を使い、カンチレバーの動きを光学的に検出し、アナログ音楽信号として出力します。振動系が軽量で針先の動きが磁力の反発(磁気抵抗)を受けないため、極めてスムーズで正確なトレースを誇り、立ち上がりの速い鮮明なサウンドを生み出します。E1は光カートリッジ専用のRCA入力端子を1系統装備しています。光カートリッジは、増幅やイコライジング方式がMM/MCカートリッジと全く異なるため、独立した専用の完全バランス/デュアルモノ・フォノアンプを搭載しています。また、LED用の電源回路は、独自の低フィードバック・ディスクリート・レギュレーターで高音質化しました。外部電源を備えた独自のバランス/デュアルモノ増幅回路により、光カートリッジならではの鮮明なサウンドを望みうる最高のクオリティーでお楽しみいただけます。
■MM/高出力MC用 電圧入力
MM、トランス内蔵MC、および出力電圧の高いハイインピーダンスMCなど、出力電圧が高いカートリッジ用に電圧入力専用RCA端子1系統を装備しました。入力信号は直後にバランス化/増幅され、バランス・カレント入力と共有する完全ディスクリート構成の主増幅回路で増幅されるため、バランス・カレント入力同様に妥協の無い、優れた音質をお楽しみいただけます。使用するカートリッジに合わせて負荷抵抗、負荷容量を設定することができます。
■完全バランス/デュアルモノ/ディスクリート構成にこだわったバリアブルEQ・ゲインアンプ回路
MCバランス・カレント入力、およびMM/MC電圧入力から入力された信号は、各入力に共通の2段構成のバリアブルEQ・ゲインアンプ回路にて増幅とEQ処理が行われます。増幅方式はナチュラルな音質を求め、CR型を採用しました。完全バランス/デュアルモノ/ディスクリート構成にこだわり、部品の選定にも細心の注意を払って高音質を追求しました。増幅ゲインは、カートリッジに合わせて細かく微調整が可能で、使いやすさを高めています。
■様々なイコライザー・カーブに対応
E1は、そのシンプルで優雅な外観のイメージとは異なり、プロスタジオ機器レベルの様々なEQカーブの調整が可能です。一般的なRIAAカーブを含む6種類(RIAA、Columbia、Decca、NAB、Teldec、AES)の代表的なEQカーブをリモコンのボタン一つで呼び出すことができ、さらに3つのEQパラメーター(ローリミット、ターンオーバー、ロールオフ)を個別にカスタマイズすることで、最大4つのカスタムEQ設定をプリセットすることもできます。様々なEQカーブの設定参考値が、オーナーズ・マニュアルに掲載されており、あらゆるレコードから最高の音質を引き出すことができます。
■アナログ再生に便利な各種機能
リモコンの「DEMAG」ボタンONでレコードを約30秒再生するだけで、MCカートリッジや昇圧トランスの磁化された鉄心を消磁し、本来の音質を回復する簡易消磁機能を搭載。その他、レコード盤の反りで発生する低周波をカットするサブソニックフィルター、モノーラル盤の再生用にMONO再生モードを装備しています。
■ESOTERIC-HCLD出力バッファーアンプ
出力バッファーアンプは、プリアンプのフラグシップモデルGrandioso C1Xを踏襲し、大規模な物量を投入しました。2,000V/μsという驚異的にハイスピードなスルーレートを誇る「ESOTERIC-HCLD(High Current Line Driver)」を一つの信号ラインに対してパラレル構成で搭載。プリアンプへ強力かつハイスピードに信号を送り出すことで、躍動感あふれるサウンドをお届けします。
■ES-LINK Analog
Grandioso E1は、プリアンプとの接続にRCA出力、XLR出力を各1系統ずつ装備しており、XLR出力は設定の切り替えにより、「ES-LINK Analog」出力に設定することができます。「ES-LINK Analog」は、対応した機器同士を接続することで、レコーディングスタジオのアナログコンソールからそのままモニターしているような、臨場感に溢れた再生ができるESOTERIC独自の電流伝送方式です。一般的な電圧伝送と比べて、約100倍の電流を伝送するため、音楽のエネルギーを余すところなく伝送することができ、パワフルで、奥行感やライブ感に大変優れています。また、原理的に接続ケーブルのインピーダンスの影響を受けないため、出入力信号の同一性を極めて高く保つことができます。
■ES-LINK Analog = ESOTERIC独自の電流伝送
オーディオ機器では、音楽信号の強弱を、電圧の強弱で伝える「電圧伝送」が一般的です。これに対して、ES-LINK Analogは、電流の強弱や方向性で音楽信号を伝える「電流伝送」です。
通常の電圧伝送では、出力機器側の出力インピーダンスは低く、入力機器の入力インピーダンスを高くする、「ロー出し、ハイ受け」が基本となります。つまり、信号伝送時に必要な電流値は低く抑える傾向にあります。
また伝送路(インターコネクトケーブル)の抵抗成分(インピーダンス)により、伝送する信号の電圧は、オームの法則(電圧=電流×抵抗)で計算されるレベル分減衰して、入力機器側で受信されることとなります。そしてケーブルが長くなると抵抗分が大きくなり、影響はより大きくなります。
それに対して、電流伝送では出力機器の出力インピーダンスは高く、入力機器の入力インピーダンスを低くする、「ハイ出し、ロー受け」の回路となり、電圧伝送に比べ、信号伝送時の電流値は大きくなるため、音楽信号を力強く送り出すことができます。
また、電流伝送では、出力機器から出力された電流値と、入力側の機器が受け取る電流値は常に一致します。ホースを使って蛇口からバケツに水を送ることを想像してみてください。ホースに穴が開いていない限り、蛇口から出た水はホースの長さに関わらず、常に同じ量をバケツ側へ流すことができます。同じように、仮に伝送路となるケーブルが複数経路に分かれるようなことがなければ、出力側からの電流は、全て入力機器に届けられ、流れる電流値は必ず一致し、伝送路が長くなっても変わりません。微小な信号も正確に伝送ができるこの利点は、精密な信号を計測する計測機器で電流伝送が多用されていることからも明らかです。
ESOTERICの機器では、通常の電圧伝送の出力機器側は出力インピーダンス数十Ω、入力機器側は100kΩ程度の入力インピーダンスで設計されています。それに対し、ES-LINK Analogの送受信回路では、出力機器側の出力インピーダンス約1kΩ、入力機器側は入力インピーダンス0Ωで受信するような回路となっています。
音楽信号を伝送する場合に流れる電流値に着目した場合、通常の電圧伝送と同じレベルの音楽信号を伝送しているときの、ES-LINK Analog伝送の電流値は、電圧伝送で流れる電流値の約100倍となります。電流値が高いため、音楽のエネルギーを余すところなく伝送することができるのです。
■2シャーシ構成
フォノアンプ・ユニット本体から、電源/コントロール部を分離した2シャーシ構成を採用。振動やノイズの原因となる電源部、コントロール部、ディスプレイ部を別ユニット化することで、オーディオ信号を極めてピュアに増幅することができます。
■強力な4系統独立の電源部
電源/コントロールユニットは、メイン・ユニットからセパレートされ、フォノアンプとしては異例の大規模な4系統独立電源を構成し、本体との接続は3本の専用DCケーブルで行います。
MC/MM用フォノアンプ部の電源は、電源トランス、整流回路を左右に独立させた完全デュアルモノ構成を採用。光カートリッジ用フォノアンプ、コントロール部もそれぞれ専用の電源部を搭載しています。電源を4系統に独立させることで、回路間の相互干渉を防ぎ、E1のピュアで力強い再生能力を支えています。
■ウルトラ・ローノイズ・ロジックコントロール
操作・表示を司るロジック系コントロール部は、電源ユニットに統合し、フォノアンプ・ユニット本体から物理的に隔離しました。また、電源/コントロールユニットからフォノアンプ・ユニット本体に接続される全てのコントロール信号は、大規模なアイソレーター回路でオーディオ回路から電気的に分離し、ピュアな再生にこだわりました。
■リモコンによる集中コントロール
ロジックコントロールを電源ユニット内に統合し、集中コントロールすることで、イコライザー・カーブや各種設定などほぼ全ての機能を付属のリモコンで、試聴ポジションから遠隔操作することができます。また、パネル面は必要最小限のボタンのみを残し、シンプルでエレガントなGrandiosoならではのフロントフェイスを際立たせています。
高度な金属加工が生んだ質感の高いアルミニウム製リモコンは、手に馴染みやすいスマートホンサイズで、操作シーンごとに使うボタンを両面に配置した機能的なデザインを採用しました。
■シャーシコンストラクション
「マスターサウンドの再現」という唯一無二のデザイン・ゴールに向けて、E1のシャーシは、音質へ影響を及ぼすあらゆる振動を最適にコントロールします。剛性と柔軟性のバランスを極限まで突き詰めた、スポーツカーさながらのメカニカル・エンジニアリング。流麗でクリーンなフォルムが、その完成度の高さを物語ります。剛性が必要なエンクロージャーは重量級肉厚アルミニウムブロックを多用し、無共振化を徹底する一方で、トップパネルは、セミフローティング構造を取り、より開放的なサウンドを目指しました。
■マルチレイヤー構造
シャーシは、複数枚の鋼板を使ったマルチレイヤー構造を採用。各回路コンポーネントを個別のレイヤーに固定し、立体配置することで、物理的・電気的な相互干渉を最小限としています。
電源部も電源回路とトランスをマウントするレイヤーを分離し、トランスの振動が回路に伝わることを抑制しています。トランスがマウントされたボトムシャーシには、レーザーによる精密スリット加工を施し、ESOTERIC独自のピンポイントフットを通じて効果的に振動を外部へ逃がします。
■独自のピンポイント・アイソレーション・フット(特許第4075477号、第3778108号、第7413773号)
ESOTERIC独自のスパイクと受皿を一体化した特許取得アイソレーション・フットも更に改良され、進化を遂げました。ボトムシャーシから吊り下げられたフット本体は、設置時にシャーシの自重でボトムシャーシに結合されます。新たにフット上部を円錐状にテーパー加工することで、シャーシとフットの結合面積を最小化しました。また、フット底面も縁の部分で床と接地するよう、リング状にくり抜き、共振モード分散のためスリット加工を施しました。シャーシとフット、およびフットと床の設置面積を最小化することで振動コントロールを最適化し、更にシャープなフォーカスと開放的なサウンドを獲得しています。
仕様説明
■入力
端子 |
XLR |
3系統(MC電流入力専用) |
RCA |
1系統(MC/MM電圧入力) |
OPTICAL(RCA) |
1系統(光電式カートリッジ専用) |
RCA負荷抵抗 |
MC |
10 Ω、50 Ω、100 Ω、200 Ω、560 Ω |
MM |
47 kΩ |
RCA負荷容量 |
MC |
100 pF、220 pF、320 pF |
■出力
|
端子 |
XLR/ESL-Analog(切換式) |
1系統 |
RCA |
1系統 |
出力インピーダンス |
XLR |
50 Ω |
RCA |
18 Ω |
■オーディオ特性
|
RIAA偏差 |
±0.3 dB |
定格出力 |
XLR |
2 V |
RCA |
1 V |
最大出力(歪率1%) |
XLR |
6.6 V(XLR、RCA入力) / 12 V(OPTICAL入力) |
RCA |
3.3 V(XLR、RCA入力) / 6 V(OPTICAL入力) |
入力感度(1kHz)※ |
MC(電流入力) |
1.2 mV |
MC(電圧入力) |
0.5 mV |
MM(電圧入力) |
10 mV |
OPTICAL |
50 mV |
ゲイン※ |
MC(電流入力) |
65 dB (XLR出力) / 59 dB (RCA出力) |
MC(電圧入力) |
72 dB (XLR出力) / 66 dB (RCA出力) |
MM(電圧入力) |
46 dB (XLR出力) / 40 dB (RCA出力) |
OPTICAL |
32 dB(XLR出力) / 26 dB(RCA出力) |
電流ゲイン可変範囲 |
–9 〜 0 dB(3dBステップ) |
電圧ゲイン可変範囲 |
–6 〜 +4dB(2dBステップ) |
イコライザー周波数 |
LOW LIMIT(Hz) |
50、71、100 |
MTURNOVER(Hz) |
800、630、500(RIAA)、400、350、300、250、FLAT |
ROLL OFF(10kHz dB) |
-16、-13.7(RIAA)、-12.7、-12、-10.5、-8、-6、FLAT |
全高調波歪率(1kHz/22kLPF/定格出力時) |
MM |
0.008% |
OPTICAL |
0.02% |
サブソニックフィルター |
16 Hz、−6dB/octave |
■一般
|
電源 |
AC 100 V、50/60 Hz |
消費電力 |
43 W |
スタンバイ時消費電力 |
リモコン入力端子 (RS-232C)設定OFF時 |
0.3 W |
リモコン入力端子 (RS-232C)設定ON時 |
0.7 W |
外形寸法(W×H×D、突起部含む) |
本体 |
445 × 131 × 445 mm |
電源/コントロール部 |
445 × 131 × 451 mm |
質量 |
本体 |
20.7 kg |
電源/コントロール部 |
23.4 kg |
付属品 |
AC電源コード × 1、DC電源コード(オス)× 2、DC電源コード(メス)× 1、リモコン(RC-1343)× 1、リモコン用乾電池(単3)× 2、取扱説明書 × 1、ご愛用者カード × 1 |
メーカー保証 |
5年(※メーカー登録後) |
※製品の仕様、外観などは予告なく変更されることがありますので、予めご了承ください。